本年も地球温暖化と共に、酷暑が続いておりますが、ご縁のある皆様にはお元気にお過ごしのことと思います。

 主題の貸倒れが発生した場合、税法上の対処不備により損失を被らないために、貸倒れの内容・計上時期を検討してみましたので、御参考になれば幸いです。

 税法上の基本通達(当局の意見だから、これに従う義務はない)を参考に述べれば、貸倒金計上の判定時期は大きく、@法律上の貸倒れ、A形式上の貸倒れ、B事実上の貸倒れ、の3つに区分されます。

@Aについては会社更生法等・債権者集会等での債権切捨て確定額、債務免除を通知した金額等、その他紙幅の関係上詳しくは述べませんが、当局との間で意見の相違は余りありませんが、Bについては実務上、税務署との間に、多くの問題を孕んでいます。

B事実上の貸倒れとは、「債務者の資産状態・支払能力等、全額回収出来ないと判断出来る場合(担保物がない場合に限る)」「回収が出来ないと明らかになった時の決算書に損金を計上していること」が条件となっています。また、貸金の一部を損金に計上しても認められず、別表(税法上の損益計算書)での損金計上も認められません。

実務上、税務署との間に意見の相違がある場合、回収不能か否かの判断は納税者側に立証責任がありますが、Bについては回収不能の判断は法令上に規定がなく、当局・納税者共に事実の確認・認定についての問題です。回収不能金額は金銭債権の「全額」に対してであり、一部の回収不能の貸倒れ処理をすることは出来ません。

 例えば、債務者の形式的事業の閉鎖、行方不明等だけでは債務者の資産状態・支払能力等から実質的に回収不能が明らかだとは云えない、と当局は主張します。

 当局の通達によれば、「債務者の資産状態、支払能力から見て・・」となっており、具体的判断基準が示されておらず、平成16年興銀事件の最高裁判決においては「債務者の資産状況、支払能力等の債務者側の事情・・・債権回収に必要な努力・・・債権額と取立費用との比較衝量、債権回収を強行することによって生ずる他の債権者との軋轢などによる経営的損失等といった債権者側の事情・・・社会通念に従って総合的に判断されるべきもの」と判示していますが、行政事例・判決共に、かなり厳格な判断をしているので、債務者の資力・信用・事業手腕・将来性・債権者の回収努力等、債務・債権者双方の諸事情を多面的に考慮して貸倒れ処理の判断をしなければならないことになりましょう。

 特に事実上の貸倒れの会計処理に関しては、税務調査に備え、より具体的な証拠書類、貸倒れに至った事情の書面を残して置く必要があることを念のため、申し添えて置きます。


以上
平成23年8月1日
税理士法人マークス
代表社員 植村 祐三