代表社員税理士 福田重実

 税制改正大綱とは、翌年度の税制改正法案を決定するのに先立って、与党や政府が発表する税制改正の原案のことで、通常、毎年12月半ばに発表されます。政府が国会に提出する税制改正法案の元になります。 税制改正については、予算と並行して前年春頃から財務省・主計局の作業が開始されます。そして、各界および各省庁の要望を聞いて取りまとめ作業に入ります。これを受けて、税制改正大綱が決定されます。これに沿って、政府は「税制改正要綱」などを閣議決定し、法律案が内閣法制局で審議され、「税制改正法案」として国会に提出されます。

  平成27年度税制改正の大綱の概要(平成27年1月14日 閣議決定)
概要として「現下の経済情勢等を踏まえ、デフレ脱却・経済再生をより確実なものにしていくため、成長志向に重点を置いた法人税改革、高齢者層から若年層への資産の早期移転を通じた住宅市場の活性化等のための税制上の措置を講ずる。地方創生に取り組むため、企業の地方拠点強化、結婚・子育ての支援等のための税制上の措置を講ずる。さらに、経済再生と財政健全化を両立するため、消費税率の10%への引上げ時期の変更等のための税制上の措置を講ずる。BEPSプロジェクト等の国際的取組を踏まえ、国境を越えた取引等に係る課税の国際的調和に向けた税制上の措置を講ずる。このほか、震災からの復興を支援するための税制上の措置その他所要の税制上の措置を講ずる。」とされています。
具体的には、次のとおり税制改正を行うものとされています。

個人所得課税
○ NISAの拡充
・ジュニアNISAを創設(20歳未満の者の口座開設を可能に。年間投資上限額80万円)。
・投資上限額を引上げ(年間100万円⇒120万円)。
○ 住宅ローン減税等の適用期限の変更
・住宅ローン減税の拡充等の措置について、その適用期限を1年半延長(平成29年12月31日まで⇒平成31年6月30日まで)。
○ 国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の創設
・時価1億円以上の有価証券等を有する等一定の要件に該当する者が国外に転出する際に、その有価証券等の譲渡等をしたものとみなして課税する特例を創設。
○ ふるさと納税の拡充
・特例控除額の拡充(上限:個人住民税所得割額の1割⇒2割)。
・返礼品送付について、寄附金控除の趣旨を踏まえた良識ある対応の要請。
・申告手続の簡素化(確定申告不要な給与所得者等がふるさと納税を行う場合、ワンストップで控除を受けられる仕組みを導入)。

資産課税
○ 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の延長・拡充
・適用期限を延長した上で拡充(非課税枠:1,000万円⇒最大3,000万円)。
○ 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の創設
・子や孫の結婚・出産・育児に要する資金の一括贈与に係る非課税措置を創設(非課税枠:1,000万円)。

法人課税
○ 成長志向に重点を置いた法人税改革
法人税率の引下げ等 現行 27年度 28年度
法人税率 25.5% 23.9% 23.9%
法人事業税所得割(標準税率) 7.2% 6.0% 4.8%
(参考) 国・地方の法人実効税率 34.62% 32.11%(▲2.51%) 31.33%(▲3.29%)

・課税ベースの拡大等
−欠損金繰越控除の見直し (大法人の控除限度 現行:所得の80%⇒27年度:65%⇒29年度:50%)
−受取配当等益金不算入の見直し
(現行:持株比率25%未満は50%、25%以上は100%益金不算入
⇒5%以下は20%、5%超1/3以下は50%、1/3超は100%益金不算入)
−法人事業税の外形標準課税の拡大(現行:1/4⇒27年度:3/8⇒28年度:1/2)
−租税特別措置の見直し
所得拡大促進税制等の見直し
−給与等支給増加割合の要件の見直し
(現行:基準年度比27年度+3%→28年度+5%→29年度+5%
⇒27年度+3%→28年度+4%(中小+3%)→29年度+5%(中小+3%))
−法人税の所得拡大促進税制の要件を満たす場合に、法人事業税(外形標準課税)において、給与等支給額の増加分を付加価値割の課税ベースから控除する制度を導入
○ 地方拠点強化税制の創設
・地域再生法の改正を前提に、地方拠点建物等を取得した場合の投資減税の創設や雇用促進税制の拡充を行う。
○ 租税特別措置の見直し
・研究開発税制の見直し(控除限度額の総枠は「法人税額の30%」を維持しつつ、特別試験研究費の控除限度を別枠化(5%)。限度超過額の繰越制度を廃止)
・生産等設備投資促進税制の廃止
・太陽光発電設備の即時償却の廃止 等

消費課税
○ 消費税率(国・地方)10%への引上げ時期の変更等
・平成27年10月1日から平成29年4月1日へと変更。
上記の改正等が国会で可決される予定です。