代表社員 福田 重実

 今年もあと2ヶ月を切りました。皆様の手元にはマイナンバー通知カードが届きましたでしょうか?この原稿を書いている時点(11月8日)では、高野町と橿原市だけが届いているだけで、総務省のHPで発送状況を見ても近畿では殆ど完了していませんので年末調整までに全部届くか不安ですね。
 
先日奈良の金融機関で休日の税務相談に相談員として参加しました。午前10時から午後3時まで各1時間、4組の方の相談でした。殆どの方は資産を子供や孫への移転する時の税についての相談でした。相談内容は、住宅取得資金の贈与、相続税、財産の分割でした。

住宅取得資金の贈与は、父母や祖父母から住宅取得資金を贈与した場合、平成27年中ですと省エネ住宅で1,500万円、それ以外の住宅は1,000万円までは非課税とされるものです。相談では、贈与者毎に上記金額が非課税なのかという質問でした。正しくは受贈者が父母等から贈与された合計額で判定することになります。また、その贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住の用に供することが必要であること、この非課税の制度の適用を受けるためには一定書類を添付して贈与税の申告が必要であることです(贈与税が発生しなくても)。

具体的には、
@贈与者が贈与を受ける者の直系尊属である。
A贈与を受けた者が贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること。
B贈与を受けた者の贈与を受けた年の所得が2,000万円以下であること。B贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得資金で住宅を取得等すること。になります。
 
相談では、妻が住宅資金の贈与を受け、夫が住宅ローンを組み住宅を取得するということなので、その資金の割合で不動産の取得割合を登記することを説明しました。

相続税の相談は、平成27年から基礎控除が3,000万円、法定相続人の数×600万円になるためそれを超える場合は相続税が課税されることの説明をしました。また、母親が認知症であるため事前に贈与が出来ないことや、分割の方法などの質問がありました。相続人は民法で定める法定相続分でなければならないと思っている方が多く、実際には話し合いで分割できることを説明しました。
争続にならないために事前に遺言書を作成する利点を説明しました。すると、「公正証書の遺言書は高額になるから…と噂で聞いた。」と言っておられたので、財産総額によるのでそんなに高くない旨を説明すると、安心して作成に前向きになられていました。

また、相続人が女性のみで、婚姻により家系が途絶えることになるので、墓と仏壇を守ってくれる男子の孫に贈与をする場合の質問もありました。この場合、生前に贈与した場合贈与税が課税されるので、遺言で遺贈するか、孫を養子縁組して相続人とすることを説明しました。

事業を娘婿に譲り現役を引退されているご夫婦は、奥様が腰を悪くされ自宅で日常生活が不便になるためサービス付きマンションに転居されたので、自宅を売却したい旨の相談がありました。この場合住まなくなった日から3年目の12月31日までに売却することで、居住用の3千万円控除の適用を受けることができます。具体的には、売却価格から(取得価額−償却費相当額)及び売却にかかる費用を控除した儲けに該当する部分。但しこの適用を受けるためには一定の書類を添付した確定申告の必要があります。

 少子高齢化、世代間の所得格差などの日本の社会現象を税務相談で垣間見ることになったと感じました。