代表社員 福田 重実

 最近AI(人工知能)が発達し、人間の仕事が奪われる等という記事を見かけることが多くなってきたと思います。そこで今回は人工知能について紹介したいと思います。

人工知能(AI)とは知能のある機械のことです。しかし、実際のAIの研究ではこのような機械を作る研究は行われていません。AIは、本当に知能のある機械である強いAIと、知能があるようにも見える機械、つまり、人間の知的な活動の一部と同じようなことをする弱いAIとがあります。AI研究のほとんどはこの弱いAIで図のような研究分野があります。



図の左下の方にはAIの基礎的研究を、右上の方には応用的な研究を示しました。AIの基礎の研究は、強いAIに近い研究です。ここでいう推論や学習は、まだ人間のそれにはとても及ばず、そのごくごく一部を実現しているにすぎません。しかし、これらの技術はAIの応用分野の基盤となっており、その応用分野の技術はみなさんのまわりで実際に活用されています。これらのAIの各分野についてまとめました。

遺伝アルゴリズム 二つの親の特徴が子に混ざり合って遺伝する原理を利用した問題解決の手法です。ここにある探索・機械学習やプランニングを実現する方法として利用されています。この分野は、遺伝アルゴリズムの原理を用いてプログラムを生成する遺伝プログラミング、また、生物集団の進化の過程や生体内の活動をシミュレーションする人工生命などの分野に発展しています。

エキスパートシステム 専門家の知見をルールとして蓄積し、推論の手法を用いて問題を解決するシステムです。士業や専門職が該当します。

音声認識 マイクに向かって話した内容をコンピュータに理解させる研究です。カーナビゲーションなどのシステムで実用化されています。車内などの限定された状況以外での認識を可能にしたり、誰が話しているのかを特定する研究などに発展しています。

画像認識 カメラなどで撮った内容をコンピュータに理解させる研究です。コンピュータ内にある絵の内容を理解させる画像理解と絵の明るさや色調(例えばデジタルカメラのセピア調などです)を変えたりする画像処理とに大きく分けられます。画像処理は実用化されていますが、画像理解はまだ研究段階です。

感性処理 認知科学や人間工学の知見をもとに、感じが暖かいとか冷たいといった感覚をコンピュータ上に実現しようとする研究です。

機械学習 観測センサーやその他の手段で収集されたデータの中から一貫性のある規則を見つけだそうとする研究です。数学の統計の分野と強い関連があります。また、機械学習はAIの他のほとんどの分野で利用されています。

ゲーム 人間とのゲームをコンピュータにさせようとする研究です。人間のチェスチャンピオンとの対戦でコンピュータが勝つまでになりました。

自然言語処理 ふつうの文章に何が書かれているか、その意味内容をコンピュータに理解させる研究です。音声認識や情報検索の分野に応用されています。

情報検索 蓄積されたデータの中から人間が必要とするものを見つけだすための技術です。WWWの検索エンジンなどで活用されています。

推論 いろいろなルールを統合して矛盾のない答えを導き出すための手法です。最も基本になるのはアリストテレスの三段論法というものです。これは「ソクラテスは人間である。人間は死ぬ。よって、ソクラテスは死ぬ。」という三段階で結論を出すものです。

探索 データの集まりから条件に合うものを見つけだす手法です。データの数が多く、条件が複雑なので様々な工夫が必要になります。機械学習や推論の基盤となる技術です。

知識表現 知識をコンピュータの中で的確に内容を表し、効率よく蓄積する方法についての研究です。

データマイニング データベース技術と機械学習が結びついた技術で大量の整理されていないデータから役に立つと思われる情報を見つけだす手法です。例えば、ネット上で買い物をするとあなたの趣味にあったおすすめ品が示されることがあると思います。これは今までの買い物のデータをもとに顧客の好みをデータマイニンングによって調べています。

ニューラルネット 生物の神経を元にした手法です。機械学習の有力な手法として発展し、AIの各分野で活用されています。

ヒューマンインターフェース 人間が、より簡単にコンピュータなどの装置を操作できるようにするための研究です。

プランニング 目的のために、物事をどのような順序で行えば良いかを決めるための手法です。

マルチエージェント 簡単な問題を解決できるエージェントがたくさん集まって複雑な問題を解決しようとするものです。自然界の生物の集団や金融市場でのディーラの振る舞いを調べたりするのに利用されています。

ロボット 機械工学と人工知能研究の結びついた研究です。ロボットをどう動かせばよいかは、AIの各分野の手法を応用して決められます。
(社)人工知能学会HPより


仕事の半分がAI(人工知能)やロボット等で代替可能になる
「今後、10〜20年の間に人が行う仕事の半分が機械に奪われる」という内容の発表が話題を集めました。発表したのはオックスフォード大学で人工知能などの研究をしているマイケル・A・オズボーン准教授です。オズボーン准教授が行った分析手法を使い、野村総合研究所が日本国内の職業601について分析、「日本もアメリカと同様に労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能になる可能性が高い」と発表しました。
 以下に、代替可能性が高い職種と代替可能性が低い職種を順不同で抜粋します。

【代替可能性の高い職種】
一般・経理事務員、受付係、クリーニング取次店員、建設作業員、自動車組立工、自動車塗装工、スーパー店員、タクシー運転者、宅配便配達員、電車運転士、路線バス運転者、通関士
【代替可能性が低い職種】
アートディレクター、インテリアコーディネーター、フラワーデザイナー、メイクアップアーティスト、映画監督、クラシック演奏家、ゲームクリエーター、テレビタレント、はり師・きゅう師、美容師、保育士、マンガ家、ミュージシャン、経営コンサルタント、産業カウンセラー、中小企業診断士
 
 人工知能は今後人手不足を補うため、或いは自動運転等人間のヒューマンエラーを防ぐためには有効な手段となると思いますが、人工知能が人間を支配することはあってはならないことだと思います。新卒採用試験では人工知能を利用して採用時の省力化をはかっている記事を見たとき、人間が人工知能に支配され出したのかなと感じましたが、将棋の藤井七段が人工知能を超えた記事を見たときは何かほっとした気分になりました。
人間は楽な方へ進むと退化すると言われています。単純なことは人工知能に任せる時代が来ていることは間違いないようです。