今月は大阪市平野区で木工業を営んでいらっしゃる株式会社佐野木工様をご紹介させて頂きます。


 昭和26年、現会長である佐野定幸様のお父様が、大阪市東成区のご自宅の縁側でミシンテーブルの作成などを始められたのが轄イ野木工さまのルーツになります。
その後、城東区諏訪、布施、現在の大阪市平野区と、事業拡大に伴って工場を移転新設しながら現在まで60年間頑張ってこられたお話を、会長と、ご子息で社長の佐野賢治郎様にお伺いして参りました。
現在は建具を中心に制作されている佐野木工様ですが、今までにはミシンテーブル、炬燵、演説台、オフィス内に生花を植える為のプラントボックスなども手掛けてこられました。そして会長の人生観をも変える松尾産業株式会社様(現パナソニック エコソリューションズ内装建材(株))と出会い、電子ピアノなどの土台、後に佐野木工様の主要製品となるミニコンポのキャビネット作成へと繋がります。


 ミニコンポのキャビネットはスピーカーを入れる穴を開けるのですが、今のように良い機械がなかった当時は手作業による部分が多く、ミニコンポの爆発的ヒットで生産が全く追いつかない状態になってしまいました。これでは埒が明かないと、お隣の金属プレス工場に持ち込んで一か八かでお願いしたところ、見事に綺麗な穴を開けることができ、今までどんなに頑張っても1日100個しかできなかったものが、1,000個作成できるようになりました。それからはお隣に持ち込んで穴を開けていましたが、そうこうするうち、運び出してまた持ち帰るという手間すら勿体ないということになり、お隣の工場との壁を破ってコンベアーで繋げるという、異業種コラボレーションが完成しました。今でこそ色々なコラボが流行していますが当時は非常に珍しく、異業種コラボの成功例として見学の人も訪れた程だったそうです。
社長がお父様の下で働き始めたばかりの約6年間はミニコンポのキャビネットばかり作っていたそうですが、メーカーのコストダウン要求がどんどん厳しくなり、また、時代の流れとともにミニコンポの流行はやがて終焉を迎えました。時代の流れに伴い、社長は松尾産業轄L島工場で建具の講習を受け、現在の主要製造品となっている建具の生産にシフトしました。

 
 ドアや襖などの建具はサイズの決まった既製品以外に個々サイズの異なる特注品も多数ある為、コンピュータから品番等を打ち出したカラフルなシールを添付し、それぞれにあった作業が間違いなくすすむように管理されています。
「40社ある得意先の中で、PCで打ち出した納品書を送ってくるのは御社だけ」と言われた事もあった程コンピュータの導入は早く、機械制御だけに使うのは勿体無い、と早くから経理ソフトや給与計算ソフトも入れ、会長は80歳になる今でもご自身で給与計算もされるなど、積極的にPCを活用していらっしゃいます。


 現在は大手ハウスメーカーの下請けもされているのですが、メーカーが「お客様に1週間で届けます」と約束している以上、発注から3日目にはメーカーの倉庫に届くようにしなければなりません。しかし大きな建具の在庫を抱えるには膨大なスペースが必要となる為、佐野木工様ではメーカー品番に合わせた売れ筋商品を最低数保管し、PCで管理する「ストア」と呼ばれるシステムを2年前に導入。メーカーはPCからストアを見て発注し、在庫が減ればすぐに作成、補充するという実に合理的なシステムをとっています。


 また、若い方が少ない木工業界ですが、10年前に3代目社長が就任して以来、若い社員さんがどんどん増え、現在20名以上いらっしゃる社員さんの平均年齢は20代。更に9年前からは、外国人技能実習制度を利用して、3年間の期間限定で来日している中国人の女性6名を受け入れていらっしゃいます。文化の違いもあって最初はお互い苦労も多かったそうですが、会長の案内で工場を見学させて頂いている途中、私達の姿を見かけると皆さん「こんにちは!」と挨拶して下さり、異国の地で一生懸命頑張っていらっしゃる様子が伝わってきました。


 この春にも3年間働いて帰国した方々がいらっしゃったのですが、会長さんが彼女たちに「色々大変やったでしょう。」と声をかけると「日本は自由でとても楽しかった。短い3年間だった。できることならもっと居たい。」と答えが返ってきたそうで、会長さんは「これは嬉しかったねえ。社員の育成は僕にはできない。社長がえらいんです。」と仰っていました。
若い頃の会長は「とりあえず食べていければいい」と考えて、真剣に人材育成に取り組むことは無かったそうですが、前述の松尾産業鰍ウんと出会い、「これまでの自分の考えは間違っていた。社員が、『この会社に勤めている』と胸を張って言える会社にしたい、と考えを改めたんです。」と、お話し下さいました。その想いがご子息である社長にもきっちりと伝わり、形になっているんですね。


 3代目社長が引き継がれて10年になる今年は、顧客に品質のよいモノやサービスを提供する品質マネジメントシステムISO9001:2008の認証も受けるなど、積極的に事業を展開し続けていらっしゃいます。
「僕は戦争を経験し、国家経済が破たんした時代も、自由が無い時代も知っている。だから税金をごまかそうというような気持ちは全く無いし、中国から来た若い子達の辛さもわかる。」と、人生経験が滲み出た優しい表情で取材に応じて下さった会長さんのお言葉と、工場の写真を撮らせて頂いて宜しいですか?とお伺いした際、「見たからって真似できるものじゃないからね。」と自信を持って快諾して下さった社長さんのお言葉がとても印象的でした。
これからも轄イ野木工様の益々のご発展をお祈りし、私どもマークスも出来得る限りのサポートをさせて頂きます。

(担当:長谷川 / 取材・文:鈴木)


株式会社佐野木工 さま
〒547-0001 大阪市平野区加美北5-2-44   
電話06-6792-1245 HP  http://www.sano-mokko.com/