代表社員 福田 重実
 変動損益計算書とは、経費を固定費変動費に分けて、売上高から変動費を差し引いて、限界利益を計算し、そこから固定費を差し引いて利益を計算する方法です。
 変動費とは、売上高と連動して増減する費用のことで、卸・小売業では商品の原価になります。
 製造費では、原材料費や外注費・製品の製造に伴う経費になります。つまり、売上が無い場合には変動費も無いことになります。
 売価が1個 1,000円の商品の原価が600円だと、限界利益が400円で限界利益率40%となります。
    損益分岐点 固定費を賄うために必要な売上高のことです。
      固定費÷限界利益率=損益分岐点(売上高)
例1) 固定費2,000千円/月40%
      2,000千円÷40%=5,000千円/月
売価1,000円の商品だと月間5,000個を売らないと、固定費を賄えないことになります。
売上高仕入高限界利益固定費利益
5,000千円3,000千円2,000千円2,000千円0円

必要資金の売上高 固定費に返済資金を加算して必要資金を賄う売上高です。
例2) 固定費2,000千円 返済500千円 合計 2,500千円 限界利益率40%
      2,500千円÷40%=6,250千円
売価1,000円の商品だと月間6,250個を売らなければ固定費と返済ができないことになります。
売上高仕入高限界利益固定費利益
6,250千円3,750千円2,500千円2,000千円500千円
→返済金500千円

次に限界利益率の増減が利益に影響することを見てみましょう。
例3)上記の例1)の原価が500円限界利益率50%になった場合
     損益分岐点 2,000千円÷50%=4,000千円
売価1,000円の商品だと月間4,000個の販売で固定費を賄うことになります。
     必要資金売上高 2,500千円÷50%=5,000千円
売価1,000円の商品だと月間5,000個の販売で固定費と返済ができることになります。
売上高仕入高限界利益固定費利益
損益分岐点4,000千円2,000千円2,000千円2,000千円0千円
必要資金売上高5,000千円2,500千円2,500千円2,000千円500千円
→返済金500千円

このように固定費や返済は売上高に関係なく発生する費用でこれを賄うために必要な限界利益を如何にして確保するかが経営手腕になります。

@売上高=単価×数量で構成
単価を高くするか数量を増やすかの選択になります。この場合、数量は客単価の増加若しくは客数の増加を言い、単価のより高い商品を販売することが営業戦略になります。
また、既存の顧客以外の新規を開拓し取引先を増やし売上を上げる。

A限界利益率を意識
売上高が上がっても利益率が低下すると限界利益が低下して固定費を賄うことができなくなり、赤字になってしまう可能性があります。「忙しいのに儲からない」とは正にこのことになります。 また、仕入先に対す単価低下交渉や仕入先の変更で仕入れ単価を低下させる。よく仕入数量を一定数量以上購入すると割引されることがあります。しかし過剰に在庫を抱えデットストックなってしまうと限界利益の低下につながります。また、過剰在庫は資金繰りにも悪影響を及ぼしますので気を付けたいですね。

B固定費を圧縮
無駄な支払いがないか細かく検討する。最近は電気や携帯電話も様々な会社やプランを取り扱っていますので、比較検討する必要はあります。また家賃も値引交渉ができないか、PCや蛍光灯、エアコン等も省エネのものに変更すると固定費の削減になります。事務所の蛍光灯をLEDに変更して電気代が2割程度削減できました。

C借入金借り換
既存の借入金を借り換えることにより毎月の返済額を少なくする。最近のコロナ対策融資では金利が0%であったり保証料が0であったり返済期間が10年とかがあります。

売上と値引きによる利益率
<原価率50%の場合>

値引率売上高原価利益利益率利益必要売上高売上増加率
0%10,0005,0005,00050.0%
10%9,0005,0004,00044.4%5,00011,262125%
20%8,0005,0003,00037.5%5,00013.334167%
30%7,0005,0002,00028.5%5,00017,544251%
50%5,0005,00000.0%5,000
 この数値から原価を変動出来なければ、10%の値引をした場合同じ利益を確保するためには25%増の売上が必要で、20%で66%増、30%で2.5倍の売上増が必要になります。

<利益率20%の場合>
値引率売上高原価利益
0%10,0008,0002,000
10%9,0008,0001,000
 10%の値引すれば2倍売らなければ同じ限界利益を確保できないことになります。
また、限界利益率以下の値引率で販売すると売るほど赤字になります。

 このように値引することは限界利益率を低下させ必要な売上高はそれ以上になるので、在庫や資金繰りにも影響が及び増すので十分な注意が必要であることが分かると思います。
但し、過剰在庫を処分して現金化する場合は利益が減少しますが資金繰りは楽になります。