代表社員 福田 重実

 『助成金』と『補助金』、言葉は知っているがその違いを具体的には理解されていない方も多いと思います。今回は、その違いを紹介したいと思います。
助成金も補助金も、国や地方自治体から交付される返済義務のないお金です。そのため、「どちらを申請すれば良いのか?どちらに申請した方が得なの?」と、混乱する人もいるでしょう。助成金や補助金を単なる「タダでもらえるお金」として捉えるのではなく、その目的と意義について紹介します。

助成金
助成金は、ある目的を実現するために努力や工夫を行った企業に対して交付される「ご褒美」のようなものです。 特に厚生労働省が実施する雇用関係の助成金は、一般的な融資や補助金とは大きく趣旨が異なります。助成金は「もらうこと」が目的ではありません。 助成金をもらうためには、さまざまな労働環境の整備を行う必要があります

◾従業員の教育や正社員化◾育児休業の活用◾有給休暇の増加◾残業時間の削減等を実現することで受給できる助成金制度があります。
これらはいずれも、実施したところですぐには効果が現れない、それどころか当面はマイナスの影響が出るものです。社員の教育を行った場合、教育期間中は生産活動ができません。パート社員を正社員にすれば人件費が増加しますし、社員が育児休業を取れば現場の戦力がダウンします。 残業を減らせば業務時間が足りなくなるため、仕事の効率化を図る必要があります。

しかし、それは長い時間をかけて徐々に効果が現れ、教育によって知識や技術のレベルが上がった社員は、より優れた仕事をするようになります。パート社員は正社員になることで責任感が強くなり会社への貢献度が上がります。
育児休業の利用率が高まれば、その都度業務の見直しを行って無駄をなくし、育児休業からの復帰が円滑に行われる企業として社会に好印象を与えることができます。 仕事の効率化を進めて残業を減らすことができれば、社員のワークライフバランスが改善し、満足度も上がります。

これらは大半の企業が「やった方がいいと分かっているけれど、今すぐには影響がないし、面倒だし、お金がかかって大変だから、申請しない。」と感じて着手していません。 教育や正社員化をしなくても、会社経営を続けていくことができるからです。社会のために「面倒くさいしお金がかかって大変なこと」を行ってくれた企業に、ご褒美として厚生労働省がお金を交付する。それが、助成金なのです。

実際、雇用関係の助成金は多くても数百万円程度です。 教育プログラムを作って実行したり、就業規則を変更したり、業務効率化のために新しい設備を導入したりしても、もらえるのは微々たる額です。 支払った労力や費用にまったく見合いません。そのため「助成金を受けたい」と思っている事業主の中には、申請準備の途中で手間が掛りすぎるため、諦める方も多いと聞きます。雇用関係助成金は「お金をもらうために申請する」ものではありませんが、「労働環境を改善するために様々な努力をした結果としてお金をもらえる」という制度なのです。

補助金
補助金は、その名の通り「補助」するためのお金です。 何を補助するのかと言うと、事業に必要な設備投資費、自社ホームページの作成費用、販路を開拓・拡大するための展示会費や広告費、新商品開発のための研究費など、「事業活性化を図るために不足しているお金を補う」という制度なのです。そのため審査には事業計画書が必須であり、面接の際には事業計画書をもとに◾この事業がどのように社会の役に立つか◾どのようなニーズを満たし、社会にどのような影響を与えるのか等を、第三者に伝わるようにアピールしなければなりません。

書類審査と面接により、経済産業省または地方自治体に「この事業は社会の役に立ち、成長する見込みがある」と判断されれば補助金事業として認められ、事業完了時にかかった費用の一部が補助されます。
助成金 補助金
支給元 国や地方公共団体 国や地方公共団体
支給時期 後払い 後払い
返済義務 原則なし 原則なし
受給条件 資格要件を満たせば受給 補助金を使う事業の必要性を書類でアピールする必要があり
必ずしも受給できるとは限らない
書類整備 必要が無い 事業に使ったことを証明する書類の整備が必要
会計検査院の検査 なし あり
補助金も助成金も税金がその原資ですから、申請時の手間はかかるものです。また、受給に不正等や事業を廃止した場合等にはそれを返済することもあります。また、補助金も助成金も先に支払いをした後で給付されるものです。

納税者として納税義務はありますが、補助金や助成金の受給を受けるのは権利ですので、活用できるものが無いか一度検討してみてはいかかですか?