長谷川 晋也

 2019年2月13日、全生保41社の担当者は、国税庁からの緊急招集にて、法人向け商品の税務取扱いについて、抜本的に見直す旨が伝えられた。これは近年、生命保険業界で過熱していた、中小企業経営者をターゲットにした節税保険を販売停止に追い込むものでした。

振り返れば、生命保険業界はこれまでも、2008年の法人向け逓増定期や2012年の法人向けがん保険をはじめとして、個別通達等の抜け穴を通すようなかたちで、支払った保険料を全額損金算入できる節税効果を高めた保険を新たに開発しては集中販売し、その後国税庁からダメ出しを食らい販売停止するということを繰り返して行ってきた事を思い出します。

このイタチごっこに終止符を打とうと、今回、国税庁が生命保険各社に提示した見直し検討のポイントは、
@現行の個別通達(長期平準定期保険、逓増定期保険、がん・医療保険)および文書回答(長期傷害保険)を廃止し、単一的な資産計上ルールを新たに創設
A対象となる保険商品は、「法人が自己を契約者」とし、「役員または使用人を被保険者」として契約する「保険期間3年以上の定期保険と第三分野商品」で、「満期返戻金がなく」、「支払保険料が給与とならないもの」
Bピーク時の解約返戻率(=解約返戻金÷既払込保険料)が50%超となるもの
の、3つのポイントである。

これは、これまで個別通達等で商品グループごとの税務取扱いを明らかにしてきたものを完全にリセットし、どのような保険商品も同一の基準で適用していくと言うものであり、これまで続いてきた生保各社と国税庁のイタチごっこを今回で、何がなんでも止めるという国税庁の強い姿勢が感じられるものとなりました。

個人的にも、昨今の過度な節税保険の販売競争には、疑念を抱いておりましたので、今回の見直しについては、その大義を感じてはいるのですが、その反面、日々の業務上、中小企業の実態を目の当たりにしていると、数年後の業績が見えないから少しでも企業に内部留保をしたいという経営者の思いも理解できるため、今回の見直しの内容は…と思う部分が交錯している状態です。

この記事が皆様のお手元に届いているころには、今後の取り扱いについての通達が出ていることでしょう。個人的には、今回の通達変更を機に、一度、生命保険というものを再認識しようと考えております。少ないお金で大きな保障を準備することができる生命保険の本来のリスクヘッジの意味合い、また、一方にある中長期での資産形成の準備等以外に、今まで見えていなかった新しいものを発見しましたらまた、皆様にご報告いたします。