花谷 隆之

 お盆が過ぎ、今年の夏も終盤に差し掛かりました。
 今年は私の父の初盆でした。父は非常に仕事が好きな人で、一緒に飲んだりするといつも楽しそうに仕事の話をしていました。法事中に父との思い出を振り返っていると、ふと父が口癖の様に言っていたある言葉を思い出しました。
 
 それは「常に人に寄り添った仕事をしなさい」という言葉です。
 この言葉を直接聞いていた時は「あたりまえだろう。」と、それほど深く考えた事はありませんでしたが、今回ふと気付いた事があります。この言葉は、近年多くの企業が関心を持ち始めている「ウェルビーイング(幸福)」という考え方に通ずるものがあるということです。
「ウェルビーイング」による経営とは、「社員」と「社会」を幸せにする事が持続可能な企業経営につながるという考え方です。

社員の幸福度が上がれば社員が生き生きと仕事をする様になり、その環境下においてはイノベーションが生まれやすくなり、そこから提供されるモノやサービスが社会を幸せにする。その結果として企業収益が向上し、社員の待遇アップにつながる。「ウェルビーイング」による経営はその様な幸福の循環を理想として考えられています。

この「ウェルビーイング」を経営理念やビジョンに掲げる企業は近年増えています。
積水ハウスは、去年11月にグループの従業員約2万7千人に「社員個人の幸福度」調査メールを一斉に送り、「幸せの健康診断」を行いました。仲井嘉浩社長は「お客様に幸せを提供するなら、まずは従業員が幸せにならないと」という理念を説明しています。
また、上記調査を監修した幸福学の第一人者、慶応義塾大学大学院教授の前野隆司氏は下記の「幸せの4つの因子」を高めることで幸福になれると説いています。

1 「やってみよう(自己実現と成長)」
2 「ありがとう(つながりと感謝)」
3 「なんとかなる(前向きと楽観)」
4 「ありのままに(独立と自分らしさ)」


 これらを実現可能にするには社員同士、社員と経営層のコミュニケーションが風通し良く行われる社内環境が欠かせないといえます。
 最近では欧米を中心に「幸せ担当役員」であるCHO(チーフ・ハピネス・オフィサー)等を設置したりと、多くの企業で社員の幸福度向上のための環境整備を進める潮流が進んでいます。日本でも皆様ご存じの楽天グループではCWO(チーフウェルビーイングオフィサー)が、システム開発を手掛ける日立ソリューションズ・クリエイトでは事業部ごとにCHOが設置される等の動きも出てきています。
 
上記のような「社員」の幸福度を向上させる取り組みは「人(社員)に寄り添う」ことの実践に他なりません。
 そして、変化していく社会のニーズを捉えた商品・サービスの創出も「人(社会の人々)に寄り添う」こと無しでは難しいと思います。一人よがりの考えでは他人が必要としている事に気付くことが出来ないからです。イノベーション(新しい満足の創出)は「社会の人々をどうすれば幸せに出来るのか」を真摯に考えることから生まれてくるのだと思います。
 現在のコロナ禍、そしてアフターコロナ、社会は大きく変化していくでしょう。そんな時こそ「人に寄り添う」という原点に立ち返り、社内メンバー、クライアントの皆様がより幸せになる為に何が出来るかを常に考え、日々努めて参りたいと思います。