神普@裕子

 『精霊流し』と言えば長崎県出身の歌手、さだまさしさんの歌で一躍有名になりましたが、バイオリンで始まるしめやかなイメージとは違いすぎて唖然とされる方も多いと聞きました。それは「灯籠流し」のように故人・先祖の御霊をあの世へと静かに川に流す行事ではないからです。精霊流しは、その年に亡くなられた方(初盆)の御霊を乗せた精霊船を海に流すと言う、主に長崎県内各地と周辺の一部の地域でお盆に行われる故人を追悼する伝統行事です。

精霊流しでは、初盆を迎えた故人の家族が、盆提灯や造花などで飾られた精霊船(しょうろうぶね)を市中で曳いてまわり、「流し場」と呼ばれる終着点まで運びます。

精霊船は色とりどりで派手に装飾され、とてもお盆の行事の品とは思えないほど華々しく、大きな船は特に山車のような豪華さで、立派な船を出すことが一種のステータスともなっています。実際の精霊流しでは歓声や爆竹の音が鳴り響き、さながら祭りのような雰囲気なのが特徴です。爆竹を鳴らすのは中国の影響を受けているからとされており、元は魔除けの意味があったと言われています。

何より長崎市の精霊流しは、夕方から夜遅くまで爆竹が鳴り響き、その消費量は途方もなく、箱にたくさん詰まったまま一気に点火して撒いたりする為、近くを通る場合は耳栓をしないといけないほどで、さらに轟音だけでなく爆竹が沿道の見物客にまで飛んでくることもあります。大きな船には巨大な遺影が飾られているので小さなお子さんにとっては怖いという印象が強いかも知れません。最近は外国人観光客も多く、その人たちから見ると派手な提灯や飾り物が付けてあるので、慰霊と言うよりお祭りとして見物されており、異質に見えるかも知れませんが不思議な感覚になると聞いたことがあります。

一昨年の8月15日は私の母の初盆でしたので、小さいながらも精霊船を作ってもらい、子と孫、総勢11名で交代しながら練り歩きました。目立つ事を好まない母に叱られるかなと思いましたが、この時期の街の賑やかさを覚えておいて欲しいという願いと、母に対する、はなむけとして爆竹を鳴らしながら追悼しました。
亡くなる数年前には母と見物に行った事が思い出され、今回は見物される側になってしまったのかと思うのと同時に、この場に立つことで母からのバトンを渡されたと自分なりに解釈し感慨深いものになりました。

夏を田舎で過ごすと、視覚で木々の緑、遠方の山なども見られ、夜に空を見上げれば無数の星が見ることができ、聴覚では、さわさわと吹く風の音や田畑の虫の鳴き声が聞こえ、触覚では自然の涼しい風を肌で感じ、家じゅうのドアや窓を開けておくと風が通り抜け、クーラーが要らない時もあります。味覚では地元の美味しい海の幸、山の幸等を食し、嗅覚はあちらこちらから漂うお線香の臭いと…五感でお盆を体感でき都会では味わえない心地よさと、ホッとしている自分に気が付きます。

地元を離れて暮らすとその良さがとてもわかる歳になりました。
今年は帰らなかったのですが、来年あたりはぜひ帰りたいと思った今年のお盆でした。