代表社員 福田 重実

 今年の夏の猛暑、皆様はどのようにして過ごされましたでしょうか? 私は奈良の田舎に住んでいますので、例年ですと就寝時は窓を開けて扇風機で過ごしていましたが、今年は殆どエアコンをつけていました。
 
昨今のニュースの【森友学園問題】の中で「忖度(そんたく)」という言葉を初めて耳にした方は少なくないと思います。私も初めて耳にし、新聞で「忖度」という文字を目にしました。
早速【大辞林】で「忖度」を引いてみると、

そんたく…他人の気持ちを推し量ること。推察。
     「忖」も「度」もはかる意
     相手の心の中を忖度する。

「『忖』はりっしんべんで分かるとおり、人の心を推測すること。『度』は、『たく』と読む場合は『はかる』ことです。つまり『忖』『度』ともに『はかる』で、特に『忖』は『心を推測する』という意味があります」
「忖度」という言葉について、日本語学者の飯間浩明さん(三省堂国語辞典編集委員)は、次のように説明されています。
「これは伝統的なことばです。中国古代の『詩経』にも出てくるので、『昔から使われていることば』と表現するのが最も妥当です。日本にも10世紀から例がありますが、それ以前に中国から入って来たものでしょう」
従来は、「母の心を忖度する」「彼の行動の意図を忖度してみた」などと、単純に相手の心を推測する場合にも普通に使われていたという。

「忖度という言葉は非常に難しい文章語」と表現する飯間さん。そのうえで、「意味は同じでも、どういう場合に使うか、つまり用法が変わってきている」と説明する。
「最近になって、『上役などの意向を推し量る』場合に使う用法が増えたように思います。おべっか、へつらいというか。上の者に気に入られようとして、その意向を推測する。ちょっと特別な時に使われるようになった」そういった用法で「忖度」が使われるようになってきたのは、ここ十数年の話だという。飯間さんが集めた資料によると、「上役などの心を推し量る」という用法で「忖度」が使われているのは以下の例で、いずれも2000年代に入ってからだそうです。
「消費税の引き上げは避けられないが、今は国民を刺激したくない。しかし、頬かむりも無責任」。そんな首相の思いを忖度したような党税調。(「朝日新聞」社説、2006年12月15日)
 
 私は、日常この忖度という言葉は使ったことがありませんでした。しかし従来の言葉の意味からすれば、推測すると同等の言葉で日本らしい言葉と言えるのですが、最近使われている意味では、おべっか・へつらいのような悪いイメージの言葉になっているような気がします。政治家や官僚が頻繁に使う言葉は何故か悪いイメージを持ってしまいがちですね。